『強き者と賢き者と』Amazon Kindle版

  • 2019.05.24 Friday
  • 07:42
評価:
(2019-05-22)
コメント:我々はリーグ戦のコマとして使う「強き者」を求め、とある渦巻銀河の辺境へとやって来たのだが──表題作ほか9編収録のショート作品集。

JUGEMテーマ:小説全般

 

 短編とショートショート10編を組んだ作品集です。

 SFが多いですがファンタジー・おとぎ話パロディ・現代ホラーコメディ等さまざま入っております。

 

【目次】

川べりにて

強き者と賢き者と

時計が刻を告げるまで

ヴァーユ

おかあさん

ストーキング

でぃりーしゃあす

どれにしようかな

一枚の写真

正義の仕事は終わらない

 

 以下『強き者と賢き者と』一部内容紹介です。

 

========================================

 

 我々を神と認めてからの“強き者”たちは、哀れになる程によく我々を敬ってくれた。
 たどたどしい言葉で(といってもそれは我々の言語解析装置の性能の限界によるものだが)我々に挨拶を繰返し、彼らの作物、収穫物、創造物を贈り物として寄越した。(その中には我々の目を引く物もあったが、大概は無用のがらくたに過ぎなかった)
 一部には無論、Mの暴走による殺傷を恨む向きも在るには在ったが、彼らの感傷は地下にくすぶっているように見えた。
 我々は星が幾度か公転する間そこにとどまり、環境調査を行ったり“強き者”たちの体の機能を調べたりした。
 彼らを我々の住む世界に連れ帰った後、どのように飼育すべきかというマニュアルを作成する必要があったのだ。
 そしてやがて、帰還の旅に出立すべき日が来た。
 我々は連れ帰る“コマ”として予め目星をつけておいた“強き者”たちを、一匹また一匹と船に収容して行った。
「かえる」「えらぶ」「つれてく」
 我々は“強き者”たちに、そのようなメッセージを伝えた。
“強き者”たちは、多少困惑していたようだが、我々にはそれを斟酌しているひまはなかった。
 というのも、ワープゲートをくぐり抜けて、我々の許に恐るべき情報が届けられたからだ。
 それは、我々の世界において、我々のライバルであるPのチームが強力な“コマ”を仕入れ、今季リーグ最多の六連勝を収めたというものだった。
 我々は、いつまでもこんな辺境の星でぐずぐずしている訳に行かなかった。
 一刻も早く“強き者”たちを連れて帰り、闘いの“コマ”に仕立て上げて、Pのチームに対抗せねばならない。
 何しろ今季の優勝を逃したとあれば、我々は国王に喰われることになっているからだ。
 国王が優勝したチームのメンバー達を招く晩餐のメニューとして、我々負けチームの体が供されるのだ。
 我々にとっては、文字通り死活問題だった。
 その我々の運命を握っているのが、この“強き者”たちと云う訳だ。
 我々は捕えた“強き者”たちをケージに収容し、とっとと船を発進させた。
 出立の際船のそばで小さな爆弾が炸裂したようでもあったが、所詮こんな原始人どもの小技が我々の脅威となり得ることはなかった。

 我々は、元来たワープゲートへの道を辿って行った。
 朱い恒星が少しずつ巨きく膨らんで来る。
 その、天然の核融合炉の傍を通り過ぎたところに、我々が脱け出る第一のワープゲートがあるのだ。
 我々の船は、しずしずとそこへ向かった。
 恒星の手前、左の方の隅に、ぽこんと小さな球体が浮かんでいた。
 恒星の放射線を片側に浴びて、もう片方は暗かった。
「何だ?」独り言のように、Mが呟いた。
「え?」Qが振り向いた。
「“強き者”たちの様子が――何かおかしい」
 Mは、“強き者”たちを収容しているケージ内の監視装置を喰い入るように見つめていた。
 ゲージは確かに、激しく上下していた。
 それは“強き者”たちの発する波動の量とレヴェルを示すものであった。
「何か、騒いでいるのか?」Kが不審げに訊ねた。
「いや、騒いでいるというか……」Mはもごもごと、返事した。
 見てみるとそれは、可聴域の音波よりも幾分波長の短いものであった。
 つまり、声を出して騒ぎ合っている訳ではないと云うわけだ。
「これは一体…?」Zも首を傾げた。
 ゲージは一個体に一つずつ設置されていたが、そのどれもがてんでランダムに上下していた。
 もしそれが可聴域の音波であったとしても、この状態ではとても普通の会話をしているとは云えなかった。
 論争、それも今にも互いに掴み合い取っ組み合わんばかりの激しい口論のようでもあった。
「これは、思念波だな」Lが推測した。
「テレパシイか」
「奴ら、テレパシイで交信し合っているのか?」
「それとも、母星へ向けてのメッセージか?」
「それにしても、何故今いきなりそれを始めたんだろう?」
 我々はとりあえず、“強き者”たちの母星からの攻撃に備えた。
 しかしそれらしいものは起こってこなかった。
 船は何の支障もなく、しずしずとゲートに向かって行った。
 しかし、“強き者”たちの出す波動、テレパシイはどんどんボルテージを上げて行くようだった。
 我々は彼らの出す波動を解析してみた。
「ちきう」
「たちけて」
「きう」
「きうきう」
「たしけて」
「きう」
「ちきちき」
「ちきう」
“強き者”たちは一斉に、たどたどしいメッセージを発していた。
 我々にはしかし、彼らの言葉の意味するところがわからなかった。
「何んと云ってるんだ奴ら?」Zの問いに答え得る者はなかった。
“救助”を求めているのは分るが、一体誰に――?
 彼らの母星はもう遥か後ろに遠ざかってしまっているし、彼らのテクノロジイではとてもここまで追って来れないだろう。
 我々は肩を竦めて目を見交わし首を振り、そんなものは無視して旅を続けることにした。

 

「間もなく恒星を迂回するぞ」Mが静かにそう告げた直後、それは起こった。
 それは最初、電波の形で我々の船体に受容されたが、その時は無論意味が分らなかった。
 しかしその“メッセージ”の中に、宇宙に存在する物質たちが、その陽子の数の少ない物から順に並べてあるのが見えた。
 我々はこのメッセージの中に、高度な文明の存在を嗅ぎとり、これがどこから送られて来たものかを探ると同時に、彼らの言語の解析を急いだ。
「たちけて」
「ちきう」
「きうきう」
“強き者”たちはその間も激しく救助信号を送り続けていた。
 彼らはこの高度文明を持つ者たちの存在を我々よりも早く察知していたのだ。
 我々の胸中に、云い様のない不安と焦りが広がった。
「出来たぞ」」Lが叫んだ。
 船の中枢情報処理機構は、第三の者たちのメッセージの意味を我々に伝え始めた。
「こちらは地球、太陽系第三惑星の地球、E・A・R・T・H」
「救助を求めているのはあなた方ですか?」
「我々に何をして欲しいのですか?」
「こちらは地球、応答願います」
 彼らのメッセージはひとつひとつが長く、知性に溢れており、友好の情に満ちていて、そしてそれは我々にとって脅威であった。

 

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 続きは本編で是非どうぞ。

 

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